フィールドワークとは|探究学習で現場に出て、見たり聞いたりしながら問いを深める方法

フィールドワーク

デザインの手法は、探究学習にも活かせます。
この記事では、「フィールドワーク」について、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。

目 次

フィールドワークとは?

フィールドワーク
実際の現場に出て、見たり聞いたりしながら情報を集める方法

「フィールド」は、調査する場所や現場のことです。

教室の中やインターネットだけでは分からないことを、実際の場所に行って確かめます。
たとえば、次のような活動がフィールドワークになります。

  • 通学路を歩いて危険な場所を記録する
  • 公園で、どんな人がどのように使っているか観察する
  • 駅前で、人の流れや案内表示の場所を確認する
  • 地域イベントに参加して、来場者の様子を見る
  • 公共施設を利用している人に話を聞く

フィールドワークは、ただ現場に行くだけではなく、
何を見たいのか、何を聞きたいのかを考えながら、観察したことや気づいたことを記録します。

探究学習では、「学校内やインターネットだけでは入手できない情報を、現場で実際の様子を見て問いを深める方法」として位置付けましょう。

本来のフィールドワークとの違い

フィールドワークは、社会調査、文化人類学、地域研究、デザインリサーチなど、さまざまな分野で行われます。

現場に入り、人の行動、場所の使われ方、物の配置、会話、雰囲気などを観察しながら、そこで起きていることを理解します。

探究学習では、実際の現場に行って、見たり聞いたり感じたりしたことを記録することから始めましょう。

探究学習ではどこで使える?

フィールドワークは、特に「情報の収集」で使いやすい手法です。
教室の中やインターネットだけでは分からないことを、実際の場所に行って見たり聞いたりして情報収集します。

また、「課題の設定」や「整理・分析」の場面でも役に立ちます。
現場で気づいた違和感から問いを見つけたり、集めた記録を整理して、課題の背景を考えたりできます。

探究のステップ相性使い方の例
課題の設定現場で気づいた違和感や疑問から問いを見つける
情報の収集現場での観察やインタビューを通して情報を集める
整理・分析集めたメモや写真、発言などを整理し、課題の背景を考える
まとめ・表現現場で得た記録を根拠として発表や提案に活かす

机の上でのみ調べられるもの・考えられるものにも限界があります。
特に地域ならではの問題は、実際に現場に行って調べてみないと分からないことが多いです。

フィールドワークを行うと何がよいのか

フィールドワークを行うことによって、実際の様子をもとに考えられるようになります。

探究学習では、最初に立てた問いが、少し大きすぎたり、思い込みに基づいていたりすることがあります。
たとえば、「通学路が危ない」という問題を扱ったとします。

教室で考えているだけでは、どこが危ないのか、いつ危ないのか、誰にとって危ないのかがはっきりしにくいです。
地図やSNSの投稿、ネット上のブログ記事などからもある程度は情報を仕入れることはできますが、それが本当かどうか確かめる必要もあります。

実際に危険を意識しながら通学路を歩いてみると、具体的なことが見えてきます。
たとえば、

  • 朝は車の交通量が多く、自転車と歩行者も多いため、特に狭い道ではすれ違うことが難しい場面がある。
  • 雨の日は車の交通量がさらに多くなり視界も悪くなるため、信号のない横断歩道が危ないと感じる場所がある。
  • 見通しの悪い交差点がいくつかあり、車が一時停止の位置で止まっても歩行者や自転車を確認しにくい可能性がある。

このように、現場に出ることで問いが具体的になります。
また、フィールドワークでは、数字や言葉だけでは分からない情報も集められます。

  • 場所の雰囲気
  • 人の動き
  • 時間帯による違い
  • 使われていない場所
  • 人が困っている様子
  • 思っていたことと実際の違い

こうした情報は、提案を考えるときに大切な根拠となります。

フィールドワークの進め方

フィールドワークの進め方

フィールドワークは、次の5つの流れで行います。

STEP
調べたい問いを決める

まず、何を調べたいのか決めます。
たとえば、次のように考えます。

  • どの場所が危ないと感じるか
  • 誰がその場所を使っているか
  • どの時間帯に人が多いか
  • どんな行動が起きているのか
  • 何が不便の原因になっているのか

調べる問いをはっきりさせてから、現場に向かいましょう。

STEP
見るポイントを決める

次に、現場で見るポイントを決めます。
たとえば、通学路の安全を調べるなら次のような視点があります。

  • 歩行者の動き
  • 自転車の通り方
  • 車の交通量
  • 道幅や見通し
  • 横断歩道や信号の位置
  • 雨の日や朝の混雑の様子

見るポイントを決めておくと、現場でスムーズに行動できます。

STEP
現場で観察する

実際に現場に行き、決めたポイントをもとに観察します。
メモ、写真、地図、スケッチなどを使って記録します。

このとき大切なのは、「見たこと」と「思ったこと」を分けることです。
たとえば、次のように分けて記録します。

  • 見たこと
    • 朝8時ごろ、自転車と歩行者が同じ歩道に集中していた
  • 思ったこと
    • 道幅が狭く、すれ違うときに危なく感じるかもしれない

見たことは事実、思ったことは自分の解釈です。

この2つを分けて記録しておくと、あとで整理しやすくなります。

STEP
必要に応じて話を聞く

観察だけでは分からないこともあります。

その場合は、生徒、先生、地域の人、施設の人などに話を聞きましょう。
たとえば、次のような質問が考えられます。

  • この時間で危ないと感じたことはありますか?
  • どの時間帯が特に混みますか?
  • 雨の日は交通状況の様子が変わりますか?
  • 普段、どの道をどのような交通手段で通っていますか?
  • 改善されるとよいと思うことはありますか?

観察インタビューを組み合わせると、現場の様子をより深く理解できます。

STEP
記録を整理する

最後に、集めた記録を整理します。
写真、メモ、地図、発言などを見直し、共通点気づきを見つけます。

  • 危ないと感じる場所
  • 人が集中する時間帯
  • 見通しが悪い場所
  • 雨の日に変化する場所
  • 生徒と地域の人で感じ方が違う場所

たとえば上記のように整理して、最初の問いを見直します。

フィールドワークを行い、現場で得た気づきを、問いや提案につなげることが大切です。

探究学習での具体例

ここでは、「通学路の安全」を探究テーマに考えてみます。

ある班は、登校時に学校付近の道が混んでいることに不満を覚え、次のような問いを立てました。

なぜ学校近くの通学路で、危ないと感じる場所があるのだろうか

この問いをもとに、生徒たちは学校周辺の通学路を実際に歩いて調べました。

数日に分けて、朝の登校時間、放課後、雨の日など、時間や状況を変えて観察しました。
その結果、次のようなことが見えてきました。

  • 朝は自転車と歩行者が同じ場所に集中している
  • 見通しの悪い交差点がある
  • 雨の日は車の通行量が増え、歩道が狭く感じられる
  • 横断歩道の近くで立ち止まる場所が少ない
  • 生徒は危ないと感じても、どこが危ないのかを言葉にしにくい

さらに、生徒や先生に話を聞くと、危ないと感じる場所は人によって少し違うことも分かりました。
徒歩の生徒、自転車通学の生徒、車で送迎される生徒では、見えている危険が違っていたのです。

この情報をもとに、生徒たちは地図に危険を感じた場所を書き込み、写真やメモも合わせて整理しました。


その結果、最初の問いから、次のように具体化できました。

(最初の問い)— なぜ学校近くの通学路で、危ないと感じる場所や理由があるのだろうか

→ 時間帯や天候、通学方法によって、危険を感じる場所や理由が違うことが分かる。

(具体化)— 登下校中の生徒が、危険を感じやすい場所を分かりやすく共有し、安全に通学できるようにするにはどうすればよいか

このように、フィールドワークを使うと、最初はぼんやりしていた問いを、現場の情報に基づいて具体化できます。

ただ「危ない」と考えるのではなく、「いつ、どこで、誰が、なぜ危ないと感じるのか」を実際の様子から読み取り、考えることができます。

使うときのポイント・注意点

フィールドワークを行う際は、次のことに注意しましょう。

ポイント・注意点内容
目的を決めてから行く何を見るのかを先に決める
事実と考えを分ける見たことと、思ったことを分けて記録する
安全に気をつける道路や公共の場では無理をしない
記録方法を決めておくメモ、写真、地図などを使い分ける
相手への配慮を忘れない写真撮影や聞き取りでは許可を取る
行って終わりにしない集めた情報を整理し、問いにつなげる

フィールドーワークでは、実際に現場で情報を集めることはもちろん、行く前の準備行った後の整理も大切です。

また、安全面やマナーにも注意しましょう。
公共の場所では、周囲の人の迷惑にならないように行動することが大切です。

先生向け:授業で使うときの支援ポイント

先生向け授業ポイント

授業でフィールドワークを行う際、生徒が「現場に行くこと」だけに満足してプチ遠足気分だけで終わらないようにすることが大切です。

現場で見たことを、問いや考察に繋げる活動にするためにも以下のような問いかけをしてみましょう。

  • 行く前の準備中
    • 現場で何を確かめたいですか?
    • どの場所を見れば、その問いに近づけそうですか?
  • 現場に行っているとき
    • 見たことと、感じたことは分けて記録できていますか?
    • 時間帯や天候が変わると、様子は変わりそうですか?
  • 行った後の整理中
    • 現場で見えたことから、問いはどう変わりそうですか?

「何を確かめたいか」をひとつでも事前に決めておくことが大切です。


初めて授業で扱う場合は、学校内や学校周辺など、身近な場所から始めてみましょう。
次のポイントを押さえておくと、フィールドワークの効果が期待できます。

  • 行く前
    • 調べたい問いを決める
    • 見るポイントを決める
    • 記録方法を決める
    • 必要に応じて話を聞く
  • 行った後
    • メモや写真を整理する
    • 問いや提案につなげる

授業時間内で行う際、調査範囲を広げすぎないように注意しましょう。

フィールドワークは、社会、理科、情報、家庭科、保健体育などでも使いやすいです。
地域、環境、安全、福祉、防災、交通、公共施設など、さまざまなテーマに応用できます。

相性のよい手法

フィールドワークは、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。

観察法

現場で人の行動や場所の様子をよく見るために使う

インタビュー

現場で見ただけでは分からない考えや経験を聞き取る

アンケート

多くの人の感じ方や意見を集め、現場で見たことと比べる

親和図法

集めたメモや発言を整理し、共通する気づきや課題を見つける

カスタマージャーニーマップ

現場で見えた行動を、時間の流れに沿って整理する

プロトタイピング

フィールドワークで見つけた課題をもとに、安全マップや案内表示などを試作する

まとめ

フィールドワークは、実際の現場に出て、見たり聞いたりしながら情報を集める方法です。

探究学習では、学校の中やインターネットだけで調べても煮詰まってしまうことがあります。
教室の中だけでは分からないことを実際の現場に行って調べることには、新たな気づきや新鮮さがあります。

ただ現場に行くだけで終わらせないで、
何を調べるのか決め、見たことや聞いたことを記録し、整理するまでがセットです。

フィールドワークによって、ぼんやりしていたテーマも、現場の情報によって具体的になります。
通学路の安全、公園の使われ方、地域イベントの参加のしやすさなど、身近なテーマでも活用できます。

自分たちの思い込みだけで済まさず、実際の様子から問いを深めていきましょう。

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