デザインの手法は、探究学習にも活かせます。
この記事では、「ペルソナ」を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
ペルソナとは?
ペルソナ
調査で分かったことをもとに、代表的な相手像を具体的に整理する方法
相手像とは、主に探究テーマの課題解決に関係する人のことです。
たとえば以下のような人です。
- 商店街を平日に利用している地域の人
- 商店街の前を通るが、お店には入らない高校生
- 平日の来店客を増やしたい商店主
- 昼休みをもっと快適に過ごしたい生徒
ペルソナでは、「該当する多くの人」ではなく、具体的なひとりの人物をイメージします。
- どんな目的で行動しているのか
- 何に困っているのか
- どんな気持ちを持っているのか
- 何を大切にしているのか
- どんな場面でその問題に出会うのか
以上のようなことを、イメージする具体的な人物に当てはめて考えていきます。
本来のペルソナとの違い
デザインやマーケティングの分野では、ペルソナは商品やサービスを使う人を具体的に考え、商品やサービスの開発・向上・改善などに役立てます。
たとえば新しいアプリを開発する際、以下のことを整理します。
- どんな人が使うのか
- どんな場面で使うのか
- 何に困っているのか
- どんな価値を求めているのか など
そうすることで、開発側の思い込みだけでなく、ユーザ(利用する人)の立場から考えることができます。
ただ、探究学習では専門的なマーケティングのように細かく作り込む必要はありません。
大切なのは、調査で集めた声や行動をもとに、考える相手を具体化することです。
想像だけで人物を作るのではなく、実際にインタビューや観察などを通して分かったこと事実をもとに整理します。
探究学習ではどこで使える?
ペルソナは、特に「整理・分析」で使いやすい手法です。
インタビューやアンケートで集めた情報をもとに、相手の特徴や困りごとを整理できます。
また、「まとめ・表現」でも役立ちます。
提案を考えるときに、誰に向けたものなのかをはっきりさせられるからです。
| 探究のステップ | 相性 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | 誰のどんな困りごとに向き合うのかを考える | |
| 情報の収集 | インタビューやアンケートで聞く相手を考える | |
| 整理・分析 | 集めた情報から代表的な相手像を整理する | |
| まとめ・表現 | 提案や発表の対象を明確にする |
ペルソナの設定は何がよいのか
探究活動では、提案を考えるときに対象がぼんやりしたままのことがあります。
「みんなにとって便利なものにしたい」
「地域の人に喜んでもらいたい」
「多くの人が使いやすい場所にしたい」
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
しかし、対象を「みんな」とすると、具体的な提案が考えにくくなります。
ペルソナを設定することで、より相手の立場から考えやすくなります。
- その人はどんな場面で困っているのか
- 何があると助かるのか
- どんな情報ならわかりやすいのか
- どんな提案なら使ってみたいと思うのか
探究活動において、課題を自分ごとに落とし込むことは大切です。
さらに「自分たちが考えたいこと」だけでなく「相手にとって意味のあること」へと近づけることで、より意味のある活動となります。
ペルソナ設定の進め方

ペルソナの設定は、次の5つの流れで行います。
まず、対象の観察やインタビュー、アンケートなどで分かったことを整理します。
- どんな人が利用しているか
- どんな場面で困っているか
- どんな行動をしているか
- どんな意見が多かったか
- 少数だが気になる声はあったか
ペルソナは、ただの想像で作るものではありません。
調査結果をもとに作ることが大切です。
次に、集めた情報の中から似ている特徴をまとめます。
たとえば、平日の商店街について調べている場合、
- 学校帰りに商店街を通る高校生
- 買い物のために商店街を使っている高齢者
- 平日の来店客を増やしたい商店主
- 商店街に興味はあるが、入るきっかけがない人
- のんびり休憩できるような憩いの場を求めている人
上記のような人のまとまりが見えてくるかもしれません。
この時、親和図法を使うと整理しやすいです。
まとまりが見えてきたら、代表的な相手像を決めます。
すべての人を一度に表そうとしなくても大丈夫です。
まずは探究テーマにとって最も大切だと思う相手をひとり選びます。
たとえば、
- 学校帰りに商店街を通るが、店にあまり入らない高校生
- 平日の日常使いの買い物で商店街を使う高齢者
- 平日の商店街の人通りや来客を増やしたい商店主
誰をペルソナにするかによって、見えてくる課題や提案の方向性は変わります。
代表的な相手像が決まったら、ペルソナシートに整理します。
シートには次のような項目があれば十分です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 仮の名前でよい |
| 立場 | 生徒、地域の人、利用客など |
| よくある行動 | 普段どのように行動しているか |
| 困っていること | どんな場面で困っているか |
| 大切にしていること | 何を重視しているか |
| 必要としていること | どんな支援や工夫があるとよいか |
名前や細かいプロフィールを作り込む必要はありません。
大切なのは、相手の行動や困りごと、必要としていることを整理することです。
最後に、作ったペルソナの立場で問いや提案を考えます。
- この人が本当に困っていることは何だろう
- この人が立ち寄りやすい場所だと感じるきっかけは何だろう
- この人に伝わる情報の出し方はどんなものだろう
ペルソナは作ってからが肝心です。
ペルソナ視点で問いや提案を見直しましょう。
探究学習での具体例
ここでは、「平日の商店街に立ち寄る人を増やすにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみます。
ある班は、地域の商店街について調べていました。
最初は、次のように考えていました。
「平日の商店街は人通りが少ないので、もっと多くの人に来てもらう必要があるのではないか。」
そこで、班は商店街で観察をしたり、お店の人や地域の人にインタビューをしたりしました。
調査を通して、次のような気づきが出てきました。
- 学校帰りに商店街の前を通る高校生はいる
- しかし、高校生がお店に入ることは少ない
- お店の情報や入りやすい時間帯が分かりにくい
- 高齢の人は、日常の買い物や休憩のために商店街を使っている
- 商店街のお店の人は、平日に立ち寄るきっかけを増やしたいと考えている
- 買い物目的がないと、商店街に入る理由が少ない
班は集めた情報を整理し、代表的な相手像を考えることにしました。
考えたペルソナは以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | はるとさん |
| 立場 | 高校2年生 |
| よくある行動 | 学校帰りに商店街の近くを通るが、店にはあまり入らない |
| 困っていること | どんな店があるのか、自分が入って良い雰囲気なのか分からない |
| 大切にしていること | 友達と気軽に立ち寄れること、短い時間でも楽しめること |
| 必要としていること | 高校生でも入りやすいきっかけや、分かりやすい情報 |
このペルソナをもとに、班は次のように考えました。
「商店街に関心がないのではなく、立ち寄るきっかけや入りやすさが足りないのではないか。」
そして、問いを次のように見直しました。
「学校帰りの高校生が、平日の商店街に気軽に立ち寄れるきっかけをつくるにはどうすればよいか。」
ペルソナを使うことで、「商店街に人を増やす」という大きな問いが、より具体的になりました。
平日に買い物で商店街を利用している高齢者をペルソナにすると、休憩場所や歩きやすさ、日常の買い物のしやすさが課題解決のキーになってくるかもしれません。
商店街のお店の人をペルソナにすると、お店の情報発信や常連客との関係づくりが課題解決のキーになってくるかもしれません。
このように、ペルソナを誰にするかによって、見えてくる課題や提案も変わります。
ペルソナを作るときのポイント・注意点
ペルソナを作るときは、次のことを意識しましょう。
| ポイント・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 調査結果をもとにする | 想像だけで作らない |
| 作り込みすぎない | 名前や性格より、行動や困りごとを大切にする |
| ひとりにまとめ過ぎない | 違う立場の人がいる場合は複数作る |
| 決めつけない | 「この人はこうに違いない」と考え過ぎない |
| 提案に活かす | 作って終わりにせず、問いや解決策を見直す |
| 少数の声も大切にする | 数が少なくても重要な困りごとがある |
特に大切なのは、想像だけで作らないことです。
ペルソナは架空の人物ですが、完全な空想ではありません。
インタビューやアンケート、観察などを通して見えてきた行動や困りごとをもとに作ることが大切です。
また、ペルソナをひとりに絞ってしまうと、別の立場の人が見えにくくなることがあります。
必要に応じて、複数のペルソナを作って比較するのもアリです。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業で生徒にペルソナを設定させる際は、生徒が「想像上のキャラクター作り」で終わらせてしまわないように、次のような問いかけをしてみましょう。
- そのペルソナは、どの調査結果をもとに作成しましたか?
- その人は、どんな場面で困っていますか?
- その人にとって大切なことは何ですか?
- 自分たちの提案は、その人にとって役立ちますか?
- 別の立場の人はいませんか?
- ペルソナをもとに、問いをどう見直せますか?
ペルソナは、生徒にとって取り組みやすい一方で、想像に寄り過ぎやすいです。
そのため、以下の流れを意識しましょう。
- 調査結果を確認する
- ペルソナに反映する根拠を示す
- 作ったペルソナをもとに問いや提案を見直す
また、複数の班でペルソナを見せ合う時間を設けると、相手像の違いや考え方の違いに気づきやすくなります。
相性のよい手法
ペルソナは、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。
ペルソナを設定することで、具体的にどのような相手に向けて課題解決を行おうとしているのかが見え、提案の方向性を考えやすくなります。
まとめ
ペルソナは、調査で分かったことをもとに、代表的な相手像を具体的に整理する方法です。
探究学習では、誰のために考えるかを明確にする際に利用しましょう。
大切なのは、想像だけで作らないことです。
- 調査結果をもとにすること
- 行動や困りごとを整理すること
- 相手の立場から問いや提案を考えること
- 作って終わりにせず、探究に活かすこと
ペルソナによって、「みんなにとってよいもの」ではなく、「具体的な誰かにとって意味のあるもの」を考えやすくなります。
対象が「みんな」から「具体的な誰か」になることで、見えてくる課題や問題点、そこから解決につなげる糸口を見つけやすくなります。
問いが誰に役立つものなのか不透明だった場合、ペルソナを設定してみましょう。
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