デザインの手法は、探究活動にも活かせます。
この記事では、「ブレインストーミング」という手法を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
ブレインストーミングとは?
ブレインストーミング(通称:ブレスト)
グループで自由にアイデアを出し合い、考えを広げる方法
次のような場面でブレストは活躍します。
- 探究テーマの候補を出す
- 課題の原因を考える
- 解決策のアイデアを出す
- 発表や提案の方法を考える
- 既存のアイデアをさらに広げる
ブレストでは、最初から良いアイデアを厳選しようとしません。
まずはできるだけ多くの考えを出すことを大切にします。
「これは無理かもしれない」
「少し変なアイデアかもしれない」
大歓迎です。
いったんアイデアとして出してみることで、そこから新しい発想につながることがあります。
本来のブレインストーミングとの違い
ブレストは、商品開発やサービスづくり、企画会議などでよく使われる手法です。
課題に対する解決策を広げたり、新しいアイデアを出したりするときに使われます。
たとえば、あるサービスを改善するときに、
- 利用者がもっと使いやすくなる方法
- 新機能の案
- 困りごとを解決する方法
- 伝え方や見せ方の工夫
などを短い時間でたくさん出していきます。
探究学習においては、自分の今持っている知識の組み合わせで良いので、できる限りアイデアを出してみましょう。
大切なのは、ひとりでは出しにくい・思いつきにくい考えを、グループの力で広げることです。
探究学習ではどこで使える?
ブレストは、特に「課題の設定」と「まとめ・表現」で使いやすい手法です。
探究テーマを考えるときや、解決策・提案を考えるときに役立ちます。
また、「整理・分析」の後にも使えます。
集めた情報から見えてきた課題に対して、どんな解決策がありそうかを考える場面でも有効です。
| 探究のステップ | 相性 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | テーマや問いの候補を広げる | |
| 情報の収集 | 調べる方法や聞く相手の候補を出す | |
| 整理・分析 | 見えてきた課題から解決策の方向性を考える | |
| まとめ・表現 | 提案内容、発表内容、改善案を考える |
ブレインストーミングを使うと何がよいのか
探究学習では、最初からひとつの考えに絞られて進んでしまうことがあります。
「このテーマでいいと思う」
「この方法で進めていけばいいんじゃない?」
「発表は去年の先輩の真似をして…」
時間がない中で、早く決めたいという気持ちは分かります。
でも早く決めすぎることで、別の可能性を見逃しているかもしれないのです。
ブレストを使うと、いろいろな視点からアイデアを出せたり、気づきが生まれたりします。
たとえば、
- 自分では思いつかない考えが出る
- 似たアイデアを組み合わせられる
- ひとつの課題に複数の解決策を考えられる
- グループ全員が意見を出しやすくなる
- グループメンバーそれぞれの今の考えが分かる
ブレインストーミングの進め方

ブレストは、次の5つの流れで行います。
まず、何についてアイデアを出すのかを決めます。
たとえば、
- 学校生活をより良くするには?
- 昼休みをもっと快適な時間にするには?
- 地域の商店街に立ち寄るきっかけをつくるには?
- 発表をもっと伝わりやすくするには?
テーマが広すぎると、アイデアが出しにくくなります。
「学校をよくするには?」よりも「昼休みを快適な時間にするには?」のほうが考えやすいですよね。
ブレストでは、最初にルールを確認します。
大切なルールは次の4つです。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 批判しない | 出たアイデアをすぐに否定しない |
| 量を出す | 最初からよい案を選ぼうとしない |
| 自由に考える | 少し変わった案も出してみる |
| つなげる | 他の人のアイデアにのせて広げる |
特に大切なのは、途中で否定しないことです。
「それは無理」
「意味がない」
「変だと思う」
はご法度。そう言われると次のアイデアが出しにくくなりますよね。
それと同時にアイデアの否定は可能性を潰すことになります。
まずは受け止めて、気持ちよくアイデアが出せる環境をつくりましょう。
ルールを確認したら、アイデアを出していきます。
方法は、「口頭のみ」でも、「付箋に書き出す」でも構いませんが、できれば付箋のほうをおすすめします。
たとえば最初に3分間など時間を決めて、まずは話さずひとりでアイデアを付箋に書き出します。
その後、グループで順番に、付箋1枚ずつ見ていきます。
こうすることで、発言が苦手な人や逆に話し過ぎてしまう人も、全員が平等にアイデアを出せます。
アイデアが出たら、似ているものを近くに置きます。
たとえば、図書室の利用について考えている場合、
- 静かに使うためのアイデア
- 話し合いをしやすくするアイデア
- 利用ルールを分かりやすくするアイデア
- 場所の使い方を変えるアイデア
- 利用時間を工夫するアイデア
などのように分類してみましょう。
この段階では、親和図法での知見を活かして付箋を動かしながら整理すると良いでしょう。
最後に、出したアイデアの中から次に考える案を選びます。
選ぶときは次のような視点を意識しましょう。
- 探究テーマの目的に合っているか
- 実現できそうか
- 相手にとって役に立ちそうか
- 新しさや工夫があるか
- もっと調べる価値があるか
ここで重要なのは、すぐにひとつだけに絞らないことです。
候補を2〜3個残しておくと、あとで比較したり、A/Bテストしたりできます。
探究学習での具体例
ここでは、「学校の図書室をもっと使いやすくするにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみます。
ある班は、観察、インタビュー、アンケートを通して、次のような気づきを得ました。
- 図書室ではひとりで静かに利用したい人がいる。
- 友人と話し合いながら勉強したい人もいる。
- 図書室は静かに使う場所という印象が強い。
- 図書室にある話し合いスペースの存在を知っている人は少ない。
- テスト前は席が足りない。
そこで、班はブレストによって、次のテーマの解決策のアイデアを出すことにしました。
「図書室を、静かに利用したい人にも、話し合いたい人にも使いやすくするには?」
最初に、3分という時間を決めて、ひとりずつ付箋にアイデアを書き出しました。
出てきたアイデアをみんなでひとつずつ確認しました。
- 静かに使う席と話し合える席をわかりやすく分ける
- 利用ルールを誰もが目にする場所(入口や席)に掲示する
- テスト前だけ臨時で勉強スペースの場を増やす
- 予約制のグループ席をつくる
- 図書室の使い方を紹介するポスターを作成する
- 混んでいる時間帯や席の空き状態を確認できるアプリを開発する
- 話し合いができる時間帯を設定する
そのあと、似ているアイデアをまとめました。
| グループ | アイデアの例 |
|---|---|
| 場所を分ける | 静かに使う席と話し合える席をわかりやすく分ける 話し合いができる時間帯を設定する |
| ルールを知らせる | 利用ルールを誰もが目にする場所(入口や席)に掲示する 図書室の使い方を紹介するポスターを作成する |
| 混雑に対応する | テスト前だけ臨時で勉強スペースの場を増やす 予約制のグループ席をつくる |
| 情報伝達 | 混んでいる時間帯や席の空き状態を確認できるアプリを開発する |
この整理から、班は次に試す案を2つ選びました。
- A案:図書室内で「静かに使う席」と「話し合い可能な席」を明確に分ける
- B案:利用ルールや使い方に関する掲示物を作成する
ブレストを使うことで、最初からひとつの解決策に絞らず、複数の可能性を考え出すことができました。
さらに今回出した2つの案をA/Bテストやアンケートなどによって根拠に基づいた判断をすることで、よりよい提案につなげることができます。
アイデアを出すときのポイント・注意点
ブレストでは、次のことを意識しましょう。
| ポイント・注意点 | 内容 |
|---|---|
| すぐに否定しない | 出たアイデアをその場で批判しない |
| 量を大切にする | 最初から良い案だけを出そうとしない |
| 一人で考える時間を入れる | 発言が得意な人だけに偏らないようにする |
| 付箋に書き出す | アイデアを見える形にする |
| 他の人の案にのせる | 組み合わせたり、少し変えたりして広げる |
| 最後は整理する | 出しっぱなしにせず、似ているものはまとめる |
特に大切なのは、アイデアを出す時間と評価する時間を分けることです。
アイデアを出している途中に、
「それは無理だと思う」
「それはあまりよくない」
「それは前にもあった」
などと否定的な評価をしてしまうと、考えが広がりにくくなってしまいます。
まずは広げる。そのあとで整理する。
この順番を意識して進めましょう。
ブレストのプロセスや注意点には、実はコミュニケーション能力を高める資質があります。
合理性だけを求めず、みんなの意見を聞く、否定しない、出た考えを活用する、最後はしっかりまとめるといった一連の流れは、人間関係の構築や信頼においても重要なことです。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業でブレストを行う場合は、生徒が安心してアイデアを出せる雰囲気・環境作りが大切です。
話し合いが活発になっていないグループには、以下のような問いかけをしてみましょう。
- 今はアイデアを広げる時間ですか?選ぶ時間ですか?
- そのアイデアを少し変えると、別の案が生まれませんか?
- 他の人のアイデアと組み合わせることができますか?
- まだ出ていない視点はありそうですか?
- 誰にとって役立つアイデアですか?
- 次に試せそうな案はどれですか?
ブレストは自由に話す活動に見えます。
しかし、中には話すことが苦手な生徒もいるでしょう。
授業では進め方を少し工夫することで、全員参加がしやすくなります。
- 最初に喋らずひとりでアイデア出しをする時間を設ける
- アイデア出しの際、ひとりの持ち時間を設定する
- 全員の話が弾み始めたら、自由に会話する時間を設ける
話し合いが弾むことはいいことですが、妙に高まったテンションが明後日の方向に向いてしまわないように、途中でアイデアの目的や誰のためのアイデアなのかを再確認させる問いかけが重要となります。
相性のよい手法
ブレストは、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。
ブレストは、探究学習のプロセスで何度も使えるものです。
「少しアイデアが一定方向に絞られ過ぎているかな」と感じたら、一度ブレストを行ってみましょう。
まとめ
ブレインストーミングは、グループで自由にアイデアを出し合い、考えを広げる方法です。
テーマを考えるとき、課題の原因を考えるとき、解決策を出すとき、発表方法を考えるときなど、さまざまな場面で役立ちます。
大切なのは、
- まずはいろいろなアイデアで考えを広げること
- メンバーのアイデアを否定しないこと
- 他のアイデアを活用してみること
- 最後はしっかり整理すること
ブレストを使うと、ひとりでは思いつかなかったアイデアに出会うことができます。
その際には使えなかったアイデアも、別の問題に活用できるかもしれません。
アイデアを出すこと、視野を広げること、コミュニケーション能力を高めること。
ブレストはこれらが詰まった優秀な手法です。
お知らせ

noteもやっていますので、ぜひご覧ください!
