デザインの手法は、探究学習にも活かせます。
この記事では、「親和図法」という手法を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
親和図法とは?
親和図法
集めた情報を似ているもの同士でまとめ、意味を見つける手法
インタビューや観察、アンケートなどで情報を集めると、たくさんのメモが出てきます。
- インタビューで出てきた言葉
- 観察して気づいたこと
- アンケートの自由記述
- 調べ学習で集めた情報
- グループで出した意見やアイデア など
親和図法では、これらを付箋やカードに書き出し、似ているもの同士でグループにしていきます。
最初から正解を探すのではなく、情報を動かしながら、共通点や違いを見つけていく方法です。
本来の親和図法との違い
親和図法は、もともと多くの情報や意見を整理し、そこから意味のまとまりを見つけるために使われる手法です。
インタビューや観察で得た情報を整理するときによく使われます。
たとえば、ユーザ(利用者)の声を一つひとつ付箋に書き出し、
- 困っていること
- 行動の特徴
- 感情
- 使いにくさ
- 期待していること
などのようにまとまりを探します。
探究学習で取り入れる際は、無理に専門的な分析をしてグループ分け・ラベリングをする必要はなく、集めた情報をそのまま並べるだけで終わらせず、関係や意味を考えるようにしましょう。
付箋やカードを使って、見ながら、動かしながら考えることで、情報の整理がしやすくなります。
探究学習ではどこで使える?
親和図法は、特に「整理・分析」で使いやすい手法です。
インタビューや観察で集めた情報を分類し、共通点や違いを見つけるときに役立ちます。
また、「課題の設定」でも使えます。
たくさん出した気づきや違和感を整理することで、探究の問いを見つけやすくなります。
| 探究のステップ | 相性 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | 気づきや違和感を整理し、問いの候補を見つける | |
| 情報の収集 | 集めたメモを一時的に並べて、足りない情報を確認する | |
| 整理・分析 | インタビュー、観察、アンケートの内容を分類する | |
| まとめ・表現 | 分析結果を発表や提案の根拠として整理する |
親和図法を使うと何がよいのか
探究活動では、情報を集めた後に困ることがあります。
「メモはたくさんあるけど、何が大事か分からない」
「意見がバラバラで、どうまとめればよいか分からない」
「発表で何を根拠にすればよいか分からない」
そんなときに親和図法を活用してみましょう。
親和図法を使うと、バラバラに見えていた情報の中から、まとまりが見えてきます。
- 同じような困りごとが何度も出ている
- 立場によって意見が分かれている
- ある行動の背景に共通する理由がある
- 最初に考えていた問題とは違う課題が見えてきた
集めた情報を「ただ集めたもの」から「考えるための材料」に変えることができます。
親和図法の進め方

親和図法は、次の5つの流れで行います。
まず、集めた情報をひとつずつ付箋やカードに書き出します。
このとき、1枚の付箋には1つの内容だけを書きましょう。
たとえば学校の図書室や自習スペースの利用について情報を集めたとします。
- 昼休みは静かに過ごしたい人がいる
- 放課後は自習スペースが混む
- 入口に近い席はあまり使われていない
- グループで話し合いをする場が少ない
1枚にいろいろ書き過ぎると、あとで細かく分類ができません。
次に、書き出した付箋やカードを見ながら、似ているもの同士を近くに置きます。
最初からきれいに分類しようとせず、
「なんとなく近いかもしれない」
「これは同じ話題かもしれない」
という感覚で動かしていきます。
考えながら手を動かす、ということが大切です。
似ているものが集まってきたら、グループにしましょう。
たとえば、次のようなまとまりができるかもしれません。
- 静かに過ごしたい人の声
- 話し合いをしたい人の声
- 場所の使われ方
- 時間帯による違い
- 案内やルールについて
もちろんグループは最初から完璧でなくて大丈夫です。
途中で分け直したり、あとで名前を変えたりしてもいいです。
グループができたら、そのまとまりに名前をつけましょう。
名前をつけることで、「このグループは何を表しているのか」が分かりやすくなります。
- 静かに過ごしたい人の声
→ 静かに集中したい - 話し合いをしたい人の声
→ 友人と話し合いたい - 場所の使われ方
→ 使われにくい場所 - 時間帯による違い
→ 利用時間の偏り - 案内やルールについて
→ ルールの分かりにくさ
単なる分類名ではなく、そのグループが表している意味を考えましょう。
最後に、全体を見て気づきをまとめます。
見るポイントは次のようなものです。
- どのグループが大きいか
- 似ているグループはあるか
- 意見がわかれているところはあるか
- 最初の予想と違ったところはあるか
- 新しく見えてきた問いはあるか
グループを作って、そこから何が言えるのかを考えることが大切です。
探究学習での具体例
ここでは、「学校の図書室や自習スペースをもっと使いやすくするにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみます。
ある班は、図書室や自習スペースの使われ方について、観察とインタビューを行いました。
集まったメモには、次のようなものがありました。
- 放課後はひとりで勉強している人が多い
- テスト前は席が足りない
- 入口付近の席はあまり使われていない
- 静かに使う場所という印象が強い
- 友達と少し話しながら勉強したい人もいる
- グループで話し合える場所がほしい
- 利用できる時間が分かりにくい
- どこまで話していい場所なのか分からない
- 窓際の席は人気がある
- 本を読むより、自習目的で使う人が多い など
最初はバラバラに見える情報でも、メモを付箋やカードに書き出し、似ているもの同士でまとめたら、以下のようになりました。
| グループ | 含まれる内容の例 |
|---|---|
| 集中して勉強したい | ひとりで勉強する人が多い、静かな席が人気 |
| 話し合いもしたい | 友達と勉強したい、グループで話し合える場所がほしい |
| 使われにくい場所がある | 入口付近の席が不人気、古いタイプの机とイスは不人気 |
| ルールが分かりにくい | 話していい場所か分からない、利用時間が分かりにくい |
| 時間帯による混雑 | テスト前は空いている席がない、放課後は混雑している |
この整理から、班は次のように考えました。
「図書室や自習スペースが使いにくいと感じる背景には、そもそも使いたい目的が人によって分かれており、そこが利用するにあたり曖昧になっているのではないか。」
そして、問いを次のように見直しました。
「図書室や自習スペースを、ひとりで静かに集中して利用したい人、グループ等での話し合いに利用したい人でお互いが気持ちよく利用できるようにするためにはどうすればよいか。」
親和図法を使うことで、図書室や自習スペースの利用について、集めた情報の中から共通点や違いを見えてきました。
情報を整理することで、問いや提案の方向性をより具体的にすることができます。
整理するときのポイント・注意点
次のことを意識しましょう。
| ポイント・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 1枚に1つだけ書く | 付箋1枚に複数の内容を書かない |
| 最初から正解を決めない | 動かしながら考える |
| 似ている理由を話し合う | なぜ近いと思ったのかを説明する |
| グループ名を工夫する | 単なる分類ではなく、意味が伝わる名前にする |
| 少数意見も残す | 数が少ない意見にも大事な気づきがある |
| まとめて終わらない | グループから何が言えるかを考える |
特に大切なのは、最初から正解を決めないことです。
付箋を動かしながら、
- これは同じ困りごとなのか
- これは別の立場の意見なのか
- ここに共通する理由は何なのか
と付箋やカードを動かしながら考えること自体が大切なのです。
また、数が多い意見だけが重要とは限りません。
少数の意見の中に、新しい問いや改善のヒントがあることもあります。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業で親和図法を使う場合は、生徒が「ただ付箋を分ける活動」で終わらないように、次のような問いかけをしましょう。
- なぜこの付箋とこの付箋を近くに置きましたか?
- このグループに共通していることは何ですか?
- グループ名は、内容をよく表していますか?
- 付箋の数が少ないグループがあるけど、これは本当に不要ですか?
- 最初の予想と違ったことはありましたか?
- この整理から、次にどんな問いが見えてきますか?
親和図法は見た目はシンプルな活動です。
しかし、実際には「分類する力」、「意味を見つける力」、「問いを深める力」が必要になります。
授業ではグループごとに発表し合う時間を設けると、他の班はどのように整理したのか、自分たちとの違いや整理の仕方なども学び合うができます。
相性のよい手法
親和図法は、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。
親和図法は、他の手法で情報を集めた後に使うと効果的です。
インタビューや観察で得た情報を整理し、問いや提案の方向性の解像度を上げていきましょう。
まとめ
親和図法は、集めた情報を似ているもの同士でまとめ、意味を見つける方法です。
インタビュー、観察、アンケートなどで集めた情報を整理するときに役立ちます。
大切なのは、ただ分類することではありません。
- 情報をひとつずつ書き出すこと。
- 似ているものを近くに置くこと。
- グループに名前をつけること。
- そこから気づきや問いを見つけること。
親和図法によって、バラバラに見えていた情報の中から、共通点や違いが見えてきます。
探究活動において、集めた情報から次の段階へ進めるための便利な手法です。
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