デザインの手法は、探究学習にも活かせます。
この記事では、「観察法」という手法を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
観察法とは?
観察法
人や場所、ものごとの様子をよく見て、気づきを集める方法
たとえば、次のような場面で使えます。
- 商店街の人通りを観察する
- 学校の休み時間の過ごし方を見る
- 図書館や自習スペースの使われ方を見る
- 駅やバス停で人の動きを見る
- 店舗や施設で利用者の行動を見る
観察法は、ただ「見る」だけではありません。
- どんな人がいるのか
- どのように動いているのか
- どこで立ち止まるのか
- 何に困っていそうか
そうした容姿を丁寧に見て記録します。
本来の観察法との違い
人が実際にどのように行動しているのか。
よく観察して、本人も気づいていない困りごとや工夫を探します。
たとえば、ある施設の使いやすさを調べるとき、利用者に話を聞くだけではなく、実際にどこで迷っているのか、どこで立ち止まるのかを観察します。
人は、自分の行動をすべて言葉で説明できるわけではありません。
だからこそ、実際の行動を見ることが大切になります。
本来、観察された実際の行動と、行動の背後にあると推測される意味や動機に関する仮説を明確に区別し、注意深く観察して記録しなければなりません。
ただ、探究学習では、そこまで専門的な調査のように細かく行う必要はありません。
大切なのは、自分たちのテーマに関係する場面を見て、気づいたことを記録することです。
まずは学校の中、通学路、地域の施設、商店街など、身近な場所から観察を始めてみましょう。
探究学習ではどこで使える?
観察法は、特に「情報の収集」で使いやすい手法です。
本やインターネットには載っていない、「今」の実際の様子を知ることができます。
また、「課題の設定」でも役立ちます。
現場を見ることで、まだ言葉になっていない違和感や問題に気づけるからです。
| 探究のステップ | 相性 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | 現場の違和感や困りごとを見つける | |
| 情報の収集 | 人の行動、場所の使われ方、ものの配置を記録する | |
| 整理・分析 | 観察記録を分類し、傾向や共通点を探す | |
| まとめ・表現 | 観察した事実を発表や提案の根拠にする |
観察法を使うと何がよいのか
探究の活動を進める中で、つい自分たちの思い込みで進めてしまうときがあります。
「きっと多くの人が困っているはず」
「たぶんこの場所は使いにくいはず」
「この時間帯は人が少ないはず」
でも、それはまだ予想に過ぎません。
実際に見てみると、思っていたことと違うことがあります。
- 人が少ないと思っていた場所に、特定の時間だけ人が集まっている
- 使われていないと思っていた場所が、休憩場所や撮影場所として使われている
- 困っていると思っていた人が、別の工夫をしていて自己解決済みである
- 問題は場所そのものではなく、案内の分かりにくさにある
たとえば上記のように、現場を見ることで問いや提案に新たな視点や根拠が生まれることがあります。
観察法は、「想像」だけで物事を進めないための重要な手法です。
観察法の進め方

観察法は、次の5つの流れで行います。
まず何のために観察するのかを決めます。
たとえば、以下のようなものです。
- 人の動きを知りたい
- 場所の使われ方を知りたい
- 困っていそうな場面を見つけたい
- 時間帯による違いを知りたい
目的をはっきりさせることで、何を観察すればよいかを明確にします。
次に、どこで、いつ観察するかを決めます。
同じ場所でも、時間帯や曜日によって様子は変わります。
平日か休日か、朝か昼か夕方か夜か。
たとえば、商店街を観察する場合でも、曜日や時間帯で異なる様子を観察できるかもしれません。
全て観察して記録しようとすると、記録も後からの整理も大変です。
あらかじめ見るポイントをしっかり決めておきましょう。
- どんな人がいるか
- どこを通っているか
- どこで立ち止まるか
- 何をしているのか
- 困っていそうな場面はあるか
など、目的に合わせてまずは必要最低限のポイントを洗い出してみましょう。
観察するときは、気づいたことをできるだけその場で記録しましょう。
記録の方法は次のようなもので大丈夫です。
- メモやスケッチ
- 写真
- 時間や場所
- 人の動きなどの簡単な図
- 気づいたことの箇条書き
写真を撮る際は、プライバシーに配慮して迷惑にならないよう注意しましょう。
人を撮影する場合は、必要に応じて許可を取りましょう。
観察が終わったら、記録を整理します。
見たことをそのまま並べるだけでなく、共通点や違いを探します。
整理する際、以下のように分けると考えやすくなるので参考にしてみてください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 事実 | 実際に見えたこと、起きていたこと |
| 行動 | 人がしていた動きや使い方 |
| 場所 | 使われていた場所、使われていなかった場所 |
| 違和感 | 気になったこと、困っていそうなこと |
| 気づき | 観察から分かったこと |
探究学習での具体例
ここでは、「学校の図書館や自習スペースをもっと使いやすくするにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみます。
ある班は、学校の図書館や自習スペースについて調べていました。
最初は次のように考えていました。
「図書館や自習スペースは、あまり利用されていないのではないか」
そこで、班は昼休みと放課後に、図書館や自習スペースの様子を観察することにしました。
観察する時間帯を、次のように分けました。
- 昼休み
- 放課後すぐ
- 部活動が始まる前の時間
- テスト前の期間
見るポイントは次のように決めました。
- どの時間帯に利用者が多いか
- どの席がよく使われているか
- 一人で使っている人が多いか、グループで使っている人が多いか
- 本を読んでいるのか、勉強しているのか、話し合いをしているのか
- 使われていない席や場所はどこか
- 利用しにくそうな場面はあるか
実際に観察してみると、いくつかの気づきがありました。
たとえば、
- 昼休みは短時間だけ利用する人が多い
- 放課後は一人で静かに勉強する人が増える
- 窓際や奥の静かな席は比較的よく使われている
- 入り口に近い席は空いていることが多い
- グループで話し合える場所が少ない
- 「静かに使う場所」という印象が強く、話し合いには使いにくそう
- テスト前は席が足りなくなる時間帯があった
この観察から、班は問いの方向性を少し変更しました。
「図書館や自習スペースを、一人で集中したい場合にも、少人数で話し合いたい場合にも使いやすくするにはどうすれば良いか」
最初は「利用者が少ないこと」が問題だと考えていました。
しかし、観察してみると利用されていないわけではないことが分かりました。
- 時間帯や期間によっては利用者が多い場合がある
- 勉強や読書、休憩など目的によって使われ方が違う
- 様々な目的の人が利用するのに、「ひとりで静かな空間」と「グループで話し合いできる空間」の混在が難しい状況にある
観察法を使うことで、この班は利用者が少ないことに注目するのではなく、ひとりで静かに使いたい場合とグループで話し合って活動したい場合を両立するためにはどうしたらよいかに注目することにしました。
現場の様子を観察したことで、問いをより具体的なものにしました。
観察するときのポイント・注意点
観察する際、次のことに気をつけましょう。
| ポイント・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 事実と考えを分ける | 見たことと、自分の解釈を分けて記録する |
| 時間や場所を記録する | いつ、どこで見たことなのかを残す |
| 一度で決めつけない | 複数の時間帯や場面を見て比べる |
| 小さな違和感を大切にする | 気になったことをメモしておく |
| 迷惑にならないようにする | 通行や利用、活動の邪魔をしない |
| 個人情報に気をつける | 人の顔や名前が分かる記録は慎重に扱う |
| 写真撮影は確認する | 必要に応じて許可を取る |
| 安全面に気をつける | 学校外や人通り・交通量の多い場所では特に気をつけて |
特に、事実と自分の考えを分けることを常に意識することが重要です。
たとえば、
「窓際の席に座っている人が多かった。」
これは事実です。
一方で、
「窓際の席の方が集中しやすいのだと思う。」
これは自分の考えです。
どちらも大切ですが、混ぜてしまうとあとで分析しにくくなります。
まずは見たことをそのまま記録しましょう。
そのうえで、「なぜそうなっているのか」を考えるようにしましょう。
また、観察は現場に出て行う活動です。
周りの人や場所への配慮が必要です。
学校外で観察する場合は、先生と相談しながら安全に行いましょう。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業で観察法を使う場合は、生徒が「何を見るか」を具体的にできるような問いかけをしましょう。
- 何を知るために観察しますか?
- どこを観察すると良さそうですか?
- いつ観察すると違いが見えそうですか?
- どんな行動や場面を記録しますか?
- 見たことと考えを分けて記録できていますか?
- 観察したあと、どのように整理しますか?
観察は、生徒にとって取り組みやすい活動です。
しかし、ただ見ているだけでは探究にはつながりません。
「見る目的」と「記録の仕方」を事前に確認しておくことが大切です。
また、観察後に気づいたことを付箋や表に整理する時間を入れると、次の分析につなげやすくなります。
相性のよい手法
観察法は、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。
観察法は、探究活動の初期段階で使うと、問いを見つけやすくなります。
また、インタビューと組み合わせることによって、「見えたこと」と「聞いたこと」をつなげて考えることができます。
まとめ
観察法は、人や場所、ものごとの様子をよく見て、気づきを集める方法です。
本やインターネットで調べるだけでは分からない、実際の行動や場面を知ることができます。
大切なのは、
- 目的を決めること。
- 見るポイントをしぼること。
- 見たことを記録すること。
- 記録を整理して、問いや提案に活かすこと。
観察法は、自分たちの予想だけでは見えなかった違和感や課題に気づくことができる手法です。
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