デザインの手法は、探究学習にも活かせます。
この記事では、「インタビュー」という手法を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
インタビューとは?
インタビュー
相手の話を聞き、その人の考えや経験、感じていることを知る方法
たとえば、次のような場面で使えます。
- 地域の人に困りごとを聞く
- 学校生活について生徒の意見を聞く
- 先生に授業や学校運営について聞く
- 専門家にテーマに関する考えを聞く
- 利用者に製品やサービスの使い心地を聞く
インタビューは、ただ情報を集めるだけではありません。
- 相手がなぜそう考えるのか
- どんな経験からそう感じているのか
- 普段どんな行動をしているのか
そうした背景まで知ることが大切です。
本来のインタビューとの違い
デザイン業界においては、インタビューは最も使用頻度が高く、とても重要な手法のひとつになります。
商品やサービスをつくる前に、ユーザ(利用者)の行動や困りごと、価値観を知るために行われます。
たとえば、あるアプリを使っている人に、
- どんな場面で使っているか
- 使いにくいところはどこか
- なぜその使い方をしているのか
などを聞いていきます。
ただ探究学習では、専門家のように完璧なインタビューをする必要はないです。
大切なのは、自分たちの探究テーマに関係する人の声を聞き、問いを深めることです。
最初はクラスメイト、先生、家族、地域の人など身近な人を対象に始めてみましょう。
探究学習ではどこで使える?
インタビューは、特に「情報の収集」で使いやすい手法です。
本やインターネットで調べるだけでは分からない、実際の声や経験を集めることができます。
また、「課題の設定」でも役に立ちます。
相手の話を聞くことで、自分たちがまだ気づいていなかった問題や違和感が見えてくることがあるからです。
| 探究のステップ | 使いやすさ | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | 相手の困りごとや違和感を聞き、問いを見つける | |
| 情報の収集 | 経験、意見、行動、背景を聞き取る | |
| 整理・分析 | 聞き取った内容を分類し、共通点や違いを探す | |
| まとめ・表現 | インタビューで得た声を発表や提案の根拠にする |
インタビューを行うと何がよいのか
探究活動では、つい自分たちの考えだけで進めてしまうことがあります。
「きっと困っているはず」
「たぶんこう思っているはず」
「この提案なら役に立つはず」
でもそれって、本当に誰かの声を反映していますか?
「他人のために何かを良くしたい」という思う気持ちはとても大切です。
しかし、単なる自分の思い込みで、実は相手はそう思っていないかもしれません。
それはお節介や迷惑になってしまう可能性があります。
そんなすれ違いを起こさないためにも、インタビューをして実際の相手の声を聞くことが重要なのです。
- 思っていた困りごとと違った
- 自分たちが気づいていない原因があった
- 相手にとって大切なことが分かった
- 提案の方向を見直せた
このような感想は、実際に高校生がインタビューをして感じた・気づいたことです。
「課題の設定」において自分たちの予想だけで進めず直接相手の声を聞くことで、本当に今の方向性で合っているのかを確認したり、課題に対する問いや提案に根拠を持たせたりすることができます。
インタビューの進め方

インタビューは、次の5つの流れで行います。
まず何のために話を聞くのかを決めます。
たとえば、以下のようなものです。
- 困っていることを知りたい
- 普段の行動を知りたい
- その人の考え方を知りたい
- 提案への意見を聞きたい
目的がはっきりしていると、質問も考えやすくなります。
次に、誰に聞くかを決めます。
たとえば、次のような相手です。
- クラスメイト
- 他学年の生徒
- 先生
- 家族
- 探究テーマに関係する人(企業や地域の方)
- 専門家
大切なのは、探究テーマに関係する相手を選ぶことです。
たとえば平日の地域の商店街について調べるのなら、実際に平日に地域の商店街に行ってお店の人やお客さんに聞くといいでしょう。
インタビューでは、事前に質問を用意します。
ただし、質問をたくさん作る必要はありません。
多すぎると迷惑になったり、回答してくれなかったりする場合があります。
質問には大きく2種類あり、「答えやすい質問」と「深く聞く質問」があります。
最初は答えやすい質問から始めると、相手も話しやすくなります。
インタビューでは、相手が話しやすい雰囲気をつくることが大切です。
次のことを意識してみましょう。
- 最初に目的を伝える
- 相手の会話を途中で遮らない
- うなずきながら聞く
- メモをとる
- 気になった言葉は聞き返す
予定していた質問だけにこだわり過ぎなくても大丈夫です。
その場の雰囲気や相手の感情から読み取れるものも意識しましょう。
インタビューが終わったら、聞いた内容を整理します。
聞いて終わりにしないことが重要です。また、しっかり相手にお礼を伝えましょう。
整理するときは次のように分けてみましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 事実 | 実際にしている行動や出来事 |
| 感情 | 困っている、不安、楽しい、面倒など |
| 理由 | なぜそうしているのか、なぜそう感じているのか |
| 気づき | 自分たちが新しく発見したこと |
探究学習での具体例
ここでは、「平日の商店街の賑わいを増やすにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみましょう。
ある班は、地域の商店街を観察したときに、休日に比べて平日は人通りがとても少ないことに気づきました。
その班は、最初は次のように考えていました。
「平日の商店街は、買い物に来る人が少ないから賑わいがないのではないか。」
そこで、班は商店街に関わる人にインタビューをすることにしました。
話を聞く相手として、次のような人を考えました。
- 商店街のお店の人
- 平日に商店街を利用している人
- 近くに住んでいる人
- 通学や通勤で商店街を通る人
質問は次のようなものです。
- 平日の商店街を利用することはありますか?
- どのような目的で商店街に来ますか?
- 平日の商店街について、どのような印象がありますか?
- 商店街に来る回数が増えるとしたら、どのようなきっかけがあると良いですか?
- お店や商店街に期待していることはありますか?
実際に話を聞いて見ると、「人が少ない」という見え方だけでは分からなかったことが出てきました。
たとえば、
- 平日は仕事や学校の時間と重なり、立ち寄る時間が限られる(一定の時間に集中している)
- そもそも平日に開いているお店やイベントの情報を知らない
- 買い物目的だけでなく、休憩できる場所や遊べる空間があると立ち寄りやすい
- 高齢の利用者にとっては、近くで日常の買い物ができる場所として重宝されている
- 店側は、平日に来てくれる常連客とのつながりを大切にしている
という声がありました。
この結果を受けて、班は少し問いの方向性を変更しました。
「平日の商店街で、地域の人が立ち寄りやすいきっかけをつくるにはどうすれば良いか」
最初は「人通りを増やす」にはどうしたら良いかを考えていました。
しかし、インタビューを通して、商店街の賑わいは単に人の数だけではないことに気づきました。
平日に利用する人の目的、お店の人の思い、地域の人が立ち寄るきっかけを知ることで、より具体的な探究の問いに近づくことができます。
質問を考えるときのポイント
インタビューでは、質問の作り方がとても大切です。
特に、次の4つを意識しましょう。
- はい・いいえだけで終わらせない
- 理由や経験を聞ける質問にする
- 相手を誘導しない
- 自分たちの考えや答えに合わせようとしない
- 具体的な経験を聞く
- 具体的な経験を聞くことで、どこに原因があるのかを発見する
- 理由を深く聞く
- 答えに対する理由も深く聞くことで、ズレが生じないようにする
使うときの注意点
インタビューするときは、次のことに注意しましょう。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 許可を取る | 目的を伝え、話を聞いていいか確認する |
| 個人情報に気をつける | 名前や詳しい個人情報を無理に聞かない |
| 録音や撮影は確認する | 必ず相手の同意を得る |
| ひとつの意見を全体の意見にしない | 少人数の声を絶対視しない |
| お礼を伝える | 協力してくれた相手に感謝を伝える |
インタビューは、相手の時間をもらって行う行動です。
聞かせてもらう姿勢を大切にしましょう。
また、聞いた内容を発表等で使う場合は、必ず個人が特定されないように注意し、名前や顔などをどうしても使用したい場合は、発表内容やどこで発表するか等の使用に関する詳細な説明をして本人の許可を取りましょう。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業でインタビューを行う場合、生徒にはインタビューする前の準備が如何に大切かを伝えましょう。
- 何のために聞くのか
- 誰に聞くのか
- どのように聞くのか
上記の3つのポイントを踏まえ、生徒には次のような問いかけをしましょう。
- その相手に聞く理由は何ですか?
- どんなことが分かると、あなたの課題は進みますか?
- 相手の気持ちになって質問を見返してみましょう。
- 「なぜ?」を聞ける質問になっていますか?
- 聞いた内容をどのように整理しますか?
実際にインタビューを行う前からある程度の設計をしておきましょう。
ただ、あくまで指針として1つの道筋を持っておき、この通りに進まなければいけないわけではなく、柔軟に、臨機応変にインタビューを進められるようにすることが大切です。
また、授業内で簡単な練習を入れると、インタビューの質が上がります。
たとえばペアで3分ずつ話を聞く練習をするだけでも、生徒は「聞き方」について意識することができます。
インタビューは情報収集の方法であると同時に、相手を理解するための活動でもあります。
相手の話を評価するのではなく、まずは丁寧に聞く姿勢を育てることが大切です。
相性のよい手法
インタビューは、他の手法と組み合わせるとより深い理解を得ることができます。
まとめ
インタビューは、相手の考えや経験を聞き取り、探究の問いを深める手法です。
本やインターネットで調べるだけでは分からない、実際の声を集めることができます。
大切なのは、質問をすることだけではありません。
相手の話をよく聞くこと。
理由や背景を尋ねること。
聞いた内容を整理して、探究に活かすこと。
インタビューを行うと、自分たちの予想だけでは見えなかった課題や気づきに出会うことができます。
探究活動を、より相手に寄り添ったものにするための大切な手法です。
お知らせ

noteもやっていますので、ぜひご覧ください!
