デザインの手法は、探究活動にも活かせます。
この記事では、「アンケート」という手法を、探究学習で使いやすい形に置き換えて紹介します。
アンケートとは?
アンケート
たとえば、次のような場面で使えます。
- 学校生活について多くの生徒の意見を集める
- 地域の人がどのように商店街を利用しているかを調べる
- 授業や行事について感じていることを聞く
- 自分たちの提案に対する反応を集める
- インタビューで見つけた仮説を多くの人に確認する
アンケートでは、たくさんの人から同じ形で回答を得ることができます。
そのため、全体の傾向を掴みたいときに向いています。
本来のアンケートとの違い
デザインでのリサーチやマーケティングでは、アンケートはユーザ(利用者)の考えや行動を広く知るために使われます。
たとえばあるサービスについて、以下のようなことを多くの人に聞きます。
- どのくらい使っているか(期間、頻度)
- どの機能をよく使うか(主な目的)
- どの点に不満があるか(改善点)
- どの案に魅力を感じるか(実装予定の提案)
アンケートでは、人数が増えるほど傾向を見やすくなります。
ただし、アンケートを取る人について、年齢や性別、職業や住んでいる地域などの偏りが結果に大きく影響すると考えられる場合は、均等になるようなサンプリングが必要になります。
ただ、探究学習においては、そもそも大人数を相手にアンケートを取ること自体ハードルが高いです。
「何人以上集まればいいですか?」とたまに高校生から質問を受けますが、専門的な統計調査のように難しく考える必要はありません。
大切なのは、自分たちの探究テーマについて、複数の人の考えや意見、行動を同じ質問で集めることです。
探究学習ではどこで使える?
アンケートは、特に「情報の収集」で使いやすい手法です。
多くの人の考えや行動を集め、全体の傾向を掴むことができます。
また、「まとめ・表現」でも役立ちます。
発表や提案の前に、発表内容や提案内容について相手の反応を確認するためにも使えるからです。
| 探究のステップ | 相性 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 課題の設定 | 多くの人が困っていることや関心を調べる | |
| 情報の収集 | 意見、行動、頻度、満足度などを集める | |
| 整理・分析 | 回答を集計し、傾向や違いを読み取る | |
| まとめ・表現 | 提案や発表内容への反応を確認する |
アンケートを使うと何がよいか
探究活動では、インタビューをして話を聞く機会がありますが、対象が少人数の場合、それだけでは分からないことがあります。
「この意見は多くの人に当てはまるのか」
「どのくらいの人が困っているのか」
「どの選択肢を選ぶ人が多いのか」
そうしたことを知りたいときに、アンケートが役立ちます。
アンケートによって、以下のようなことできます。
- 多くの人の意見を集められる
- 回答を数で比べられる
- 傾向をグラフにしやすい
- 発表や提案の根拠にしやすい
- インタビューや観察で見つけた気づきを確認できる
たとえば、インタビューで「学校の昼休みに、ひとりで静かに過ごしたい人がいる」と分かったとします。
そのあとアンケートを行えば、同じように感じている・考えている人がどのくらいいるのか確認できます。
アンケートは、数字や傾向の根拠を加えることに向いています。
アンケートの進め方

アンケートは、次の5つの流れで行います。
まず、何を知るためのアンケートなのかを決めます。
- 困っている人がどのくらいいるか知りたい
- どの案に関心があるか知りたい
- 普段の行動や利用頻度を知りたい
- 提案に対する反応を知りたい
目的がはっきりしていないと、質問がぼんやりしてしまいます。
次に、誰に答えてもらうかを決めます。
- クラスメイト
- 学年の生徒
- 学校全体の生徒
- 先生
- 保護者
- 地域の人
- 施設やお店の利用者
大切なのは、探究テーマに関係する相手を考えて聞くことです。
たとえば、学校の図書室の使いやすさについて調べる場合、実際に図書室を利用している人だけではなく、利用していない人にも聞くと多方向から考えが見えてきます。
質問をつくる
アンケートでは、質問の作り方がとても大切です。
質問には大きく分けて2種類あります。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 選択式 | 昼休みはどこで過ごすことが多いですか? 1. 教室 2. 体育館 3. 図書室 4. その他 |
| 自由記述式 | 昼休みに困っていることがあれば教えてください。 |
選択式の質問は、集計しやすいです。
自由記述式の質問は、相手の具体的な考えを知ることができます。
最初は選択式を中心にしながら、自由記述を少し取り入れるように設計すると、相手も回答に取り組みやすいです。
質問数は多くし過ぎないようにしましょう。
おおよその目安ですが、5〜10問くらいから始めると答えてもらいやすくなります。
質問ができたら、回答を集めます。
方法は大きくアナログとデジタルの2種類あります。
- 質問用紙を配布する
- Webベースのフォーム作成ツールを使う
- GoogleFormsやMicrosoft Formsなど
学校現場では、Google WorkspaceやMicrosoft 365を使っているところが多いと思います。
その場合、GoogleFormsやMicrosoft Formsを使うと、アンケートの作成から回収、分析までできます。
GoogleFormsはGoogleが提供、Microsoft FormsはMicrosoftが提供しているフォーム作成ツールです。
どちらも選択式、記述式の質問作成はもちろん、QRコードでの共有や結果を簡単に自動でグラフ化してくれるなど、便利な機能を使うことができます。
回答をお願いするときは、目的を簡単に伝えましょう。
また、名前を集める必要がない場合は、匿名にすると答えやすくなります。
学校のアカウントを使う場合は、回答者が学内限定になっていないか、回答者のメールアドレスを自動で集める設定になっていないかを確認しましょう。
回答を集めたら、結果を集計します。
集計するときは、次のような見方ができます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 多い回答 | どの選択肢が多かったか |
| 少ない回答 | 少数だけど気になる意見はあるか |
| 違い | 学年、性別、利用頻度などで違いはあるか |
| 自由記述 | 具体的な困りごとや理由は何か |
| 気づき | 結論、何が言えるか |
グラフにすると結果が見やすくなります。
ただし、数字を出してグラフ化して終わりではありません。
「なぜその結果になったのか」
「このグラフのどの部分からそれが読み取れるのか」
「次に何を調べる必要があるのか」
アンケートをとって終わりではなく、アンケート自体は次につなげるための道具として捉えましょう。
探究学習での具体例
ここでは、「学校の図書室をもっと使いやすくするにはどうすればよいか」という探究テーマで考えてみます。
ある班は、観察とインタビューを通して、次のような気づきを得ました。
- 放課後はひとりで勉強している人が多い
- グループで話し合えるような空間は少ない
- 図書室は静かに使う場所という印象が強い
- ここで話をしてもよいのか分からない人がいる
そこで、班はこの気づきが多くの生徒にも当てはまるのかを確認するために、学校の生徒全員を対象にアンケートを行うことにしました。
質問は、次のとおりです。
- 図書室や自習スペースをどのくらい利用しますか?
- 1. ほぼ毎日 2. 週に1回以上 3. 月に1回以上 3. ほぼ利用しない
- どの時間帯に利用することが多いですか?
- 1. 朝 2. 昼休み 3. 放課後 4. 授業で
- 主に何のために利用しますか?
- 1. 勉強 2. 読書 3. 話し合い 4. その他(記述)
- 3について、具体的にどのような目的か教えてください。
- 自由記述
- ひとりで使いたいですか、友人と使いたいですか?
- 1. ひとりで 2. 友人と
- 利用しにくいと感じることがあれば教えてください。
- 自由記述
- 話し合いができるスペースがあるのは知っていましたか?
- 1. はい 2. いいえ
- 話し合いができるスペースは必要だと思いますか?
- 1. はい 2. いいえ
回答を集計すると、次のような結果が見えてきました。
- テスト前だけ利用する人が大半である。
- ひとりで使いたい人と、友人と使いたい人がほぼ同程度いる。
- 話し合いができるスペースがあることを知っている人は2割程度しかいない。
- 利用しにくいと感じることに、「話し声が聞こえる」と回答している人が一定数いる。
- 話し合いができるスペースは必要だと感じている人は7割強いる。
この結果から、班は次のように考えました。
「図書室の利用方法(特にひとりで勉強・読書スペース、複数人で話し合いスペース)について明確に伝え、お互いが邪魔にならないような空間づくりをすれば、快適なスペースになるのではないだろうか。結果として利用する人は増えるのではないだろうか。」
そして、問いを次のように見直しました。
「図書室でひとり集中したい人とみんなで話し合いたい人が、それぞれ快適に利用できるようにするにはどうすればよいか。」
観察やインタビューで見つけた気づきを、アンケートによって、その気づきの内容を多くの人もそう思っていることを確認することができました。
質問をつくるときのポイント・注意点
アンケートでは、質問の作り方によって結果が変わってきたりします。
次のことを意識しましょう。
| ポイント・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 目的に合う質問を作成する | 何を知りたいのかを意識する |
| ひとつの質問でひとつのことを聞く | 複数の内容を一度に聞かない |
| 誘導しない | 答えを決めつけるような聞き方をしない |
| 答えやすい選択肢にする | 選択肢が分かりにくくならないようにする |
| 自由記述を少し入れる | 数字だけでは分からない理由を探る |
| 質問数を増やし過ぎない | 回答する人の負担はなるべく少なく |
| 個人情報に気をつける | 名前やメールアドレスなどの個人情報は必要な場合のみ |
特に意識しておくことは、誘導しないことです。
たまに会話で、同意を求める形で誘導しているような話し方をしてしまったこと、ありませんか?
たとえば、
「図書室に話し合いスペースがあったほうが便利だと思いますよね?」
と聞くと、答える人は「便利だ」と答えてしまいやすくなってしまいます。
それよりも、
「図書室に話し合いスペースがあった場合、利用したいと思いますか?」
のように聞くほうが中立的です。
また、
「図書室は静かで使いやすく、勉強に集中できる場所だと思いますか?」
のように、1つの質問に複数の内容を入れると答えにくくなります。
静かかどうか、使いやすいかどうか、集中できるかどうか。
この場合は3つに分けて質問する必要がありますね。
先生向け:授業で使うときの支援ポイント

授業でアンケートを扱う場合は、生徒が「質問を作って配るだけ」で終わらないように、次の3つを生徒に意識させながら進めましょう。
- 何を知るためのアンケートか
- 誰に答えてもらうのがよいか
- 結果をどのように使うのか
また、生徒には次のような問いかけも有効でしょう。
- この質問で何が分かりますか?
- その質問は答えやすいですか?
- 答えを誘導していませんか?
- 選択肢に抜けや重なりはありませんか?
- 回答者への負担が大きくなっていませんか?
- 結果をどのように分析しますか?
アンケートを実施する前に、質問を見直す時間を入れるのも良いです。
実際に答える側の立場で読んでみると、
- 質問の意味が分かりにくい
- 選択肢が選びにくい
- 答えにくい内容がある
といった問題に気づきやすくなります。
アンケートは、数字を集める活動であると同時に、問いを具体化する活動でもあります。
相性のよい手法
アンケートは、他の手法と組み合わせるとより深い学習ができます。
まず少人数の声をインタビューで集めたり、現場の様子を観察したりして仮説を立て、そのあと多くの人にアンケートをとってその仮説が正しいかどうか確認する流れがおすすめです。
まとめ
アンケートは、同じ質問を複数の人に答えてもらい、考えや行動の傾向を集める方法です。
探究学習では、多くの人の意見や行動を知りたいときに役立ちます。
大切なのは、ただ回答を集めることではありません。
- 何を知りたいのか決めること
- 答えやすい質問をつくること
- 結果をきちんと集計すること
- 数字や記述から、次の問いや提案へつなげること
日常生活でも、アンケートに回答する機会は多いと思います。
その際に「どのように設計されているか」を意識してみるといいでしょう。
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